いきあたりバッタ

森のブリコ

2008年03月01日 12:46

     むかしむかし、あるところに
  ≪いきあたりバッタ≫というバッタが
     気ままに暮らしておりました。

    秋は ≪思い月≫の下で酒を飲み
   冬は ≪なり雪≫のなかで遊びました。

  ある春の日、ふと気がつくと胸のところに
     小さなシミがついていました。
    気にしないようにしていましたが
 夏になるともっともっと大きくなっていました。
      
      洗濯しても 取れません。
     仕方なく病院に行くとそれは
 ≪苦シミ≫と≪哀シミ≫だと云われました。
     今の所、治す薬はないとも・・・。


    
    ひとりしょんぼりしていると そこへ
       極楽トンボがやってきて
『ほら元気だして!あそこの柿を食べると楽になるよ!』
         と、いいました。
 いきあたりバッタは 急いでその柿を食べました。
 でも シミは 消えません! 『どうしてだろう?』
柿の木の名札を見ると そこには≪も柿≫と≪あ柿≫
        と 書いてあります。
     シミは どんどん濃くなるばかり・・・

  そこに 真心トンボさんが やって来ました。
 うつむいている いきあたりバッタに いいました。
『そのシミを なくしたいなら あの崖を 登りなさい!』
 トンボの指差すほうを見ると険しい崖がありました。
      とても 登れそうにありません。

  でもたくさんの虫たちが 崖を登っておりました。
       ≪命崖≫という 崖でした。

     いきあたりバッタも登り始めました。
     何度もずり落ちそうになりました。
 苦しくてつらくて 何度もやめようと思いました。
でも そのたびに 真心トンボの声がよみがえります。

 洋服はぼろぼろに、いっぱいすり傷もできたけど
      やっとてっぺんに着きました。
立ち上がってシミを見ると すっかり消えていました。
     いきあたりバッタさんは それから
 ≪がんバッタ≫さんと呼ばれるようになりました。




                     
                       (おわり)


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