マイ・ブリコラージュ

私は４０歳前に、娘を出産した。　
一年前に亡くなった母の生まれ変わり？とも思った。

ふたりの兄たちは、ひとまわりも上だったから
可愛がってくれた。お風呂も毎日入れてくれた。





町の一歳半検診に行ったら、異常が見つかり
精密検査と言われ　・・・　病院へ・・・　先生は
なぜか紹介状を書いてくれて・・・
大きな病院に・・・　そこでもまた紹介状を渡され
名古屋の大学病院へ　・・・

そこの小児科には、大きな病院でも
治療のできないと判断された子供たちなのか？
いろいろな子が大勢来ていた。

名前を呼ばれ、診察・・・　血液検査、レントゲン
・・・　診察　・・・　結果は・・・
身長が１２０ｃｍで止まる病気と言われた。
どんなにうまくいっても１３０cmは難しいと・・・
生理も早いと６才頃、来るかも・・・　と　？？？


それから三ヶ月ごとの通院　・・・　検査　経過観察
ある数字が限界に達すれば、投薬や入院など
治療が始められるとのこと　・・・

見た目は、普通のまん丸な女の子なのに　・・・
好き嫌いもないし・・・　祈るしかなかった　・・・

暗く考えても仕方がないこと　・・・

その頃、野口みずきさんや、田村亮子さんなど
小さな選手がオリンピックなどで活躍していた。
だから、小さくてもこの子なりの何かが、
きっと与えられるはず。いろんな子がいるのだ。
人は、何か引き受けなければならない。
娘は、小っちゃな子担当なのかも・・・
そう思いながら、育てた。

少しでも、身長が伸びるように、姿勢だけは
良くしているように言い聞かせた。

だから、保育園の運動会で走る姿も、
お遊戯会も嬉しかった。みんなと一緒なのが
有難かった。








１２０ｃｍを越えてからは、
1cmでも有難いことと感謝した。


私の人生も波瀾万丈だったから、
色々な荒波を一緒に経験させてしまったけれど



いつしか１５８cmにもなってくれ、
高校生になって、剣道の団体戦
五人の中に並んでいる姿に、ただただ感謝した。





高校卒業後すぐから、DMや葉書がよく届いた。
成人式の着物、ヘアメイク、写真撮影　・・・
セットで　・・・　とか、驚いた。商売だなあと思った。
が、時代である。

昔は、呉服屋さんで反物を選び、帯を選び
小物や髪飾り、履物やバッグも選び・・・
美容院を予約し、写真屋さんに行き・・・
大変だった。　今は、すべてセット・・・
多くの着物から選べて、試着もあり、
前撮りもあり、当日も・・・　セットになっている。

娘が１９歳になって、一緒に出かけたついでに、
一回覗いてみようか？と、葉書をくれていた
貸衣裳屋さんの一つに寄った。

あれよあれよという間に、二階に案内され
赤系、青系、緑系・・・花柄、絞り、
金糸銀糸の刺繍、色別に柄別に何十着も並べられた
振袖があるフロアーに通された。

どうですか？どんな色が好き？と優しい店員さん
娘が、「これかな・・・」とつぶやくと、もう試着・・・
髪をくるくるっとまとめられ、普段着の上から
仮の襟、着物、帯、帯締め、帯揚げまで・・・
大きな鏡の前で、どうですか？と・・・

帯が・・・と私がつぶやくと、
帯が何十本も積まれたコーナーへ・・・

結局、仮の申込み書にサイン、
高価な粗品（？）を渡されて帰った。


前撮りは、成人式の半年以上も前の日。それでも
ヘアメイクさんに綺麗にしてもらっている娘を
後ろから見ていて幸せだった。

出来上がったころには、主人もおばあちゃんも来た。

その撮影が終わって、今度は、
亡くなった母が私の成人式に縫った着物でも、
撮ってもらった。

四十年も前の着物、裄も娘には少し短めで・・・
柄も今風ではない・・・でも・・・母はきっと喜んでくれた。

帰る時、娘は、「もお・・・着物着て、ハイ笑って！
もっと笑って！　ねじって、もう少し・・・
上向いて、笑って！・・・って・・・　もう無理　・・・　
モデルさんてすごい仕事と思う　・・・
合宿の千本素振りの方が、ずっといい　・・・」　
なんて言っていた。


成人式の当日は、朝早くから、提携の美容院に
出来上がったら、成人式に・・・　そのあと、母校に。
あっという間に洋服に着替えてしまい、同窓会に。
せわしくあちこち・・・　それでも、嬉しい日だった。


その時の写真は、私の、娘の、一生の宝物だ。






二十歳過ぎれば、もう娘の人生が始まる。
親も子離れ、娘も親離れしてゆくのだ。

それから一年もしないうちに、
家を出て行っってしまった。
ラインもあるし、時々は帰ってくるけれど、
一年に何日会うかなあ？というくらい。

だから、あの日までの日々は、宝物　

私の娘に生まれてくれて、一緒に暮らせて
感謝しかない。



どの親御さんもそれぞれの感慨で迎える成人式

そんな、とっても大切な節目の
晴れの日のはずだったのに　・・・
被害にあってしまった方たちは
本当に気の毒でならない。

ニュースで知って、出来るだけのことを！と
当日、早朝から立ち上がった、近在の美容師さん、
衣装屋さん、呉服屋さんたちには、頭が下がる。
それでこそ、プロだ。


大変なことを学んでしまった成人の日だったけれど

その分、これから、絶対、いいことはあるから、

ここからまた頑張ってくださいね！！　

遠くから声援を送ります！！


追記　：　おばさんの創ったブリコ童話に　
≪アンケート≫　≪旅の宿≫　≪ポイントカード≫
というのがあります。良かったら読んでください